2009年8月9日日曜日

自分もこうして死ねるんだ・・・高齢者共同住宅での看取りが遺した深い絆と安心

NHKクローズアップ現代「ひとりの老後も安心の住まい」(2009年
7月13日放送)を見て、看取りが暮らしの安心に直結している問題で
あると、深く考えさせられました。周りに迷惑をかけたくないと病院で
最期を迎える人が多いのですが、このことは大切な看取りの時間を人々
の暮らしから奪っているということなのかも知れません。関係性が希薄
になる社会は暮らしという文化の厚みも薄くなるような気がします。
在宅での看取りには訪問看護体制が不可欠ですが、それを充実させるこ
とが暮らしの安心につながることに私たちはもっと関心を向けてよいの
ではないでしょうか。

以下、放送内容を引用します。

お年寄りが支えあう共同住宅で最大の課題は看取りです。年を重ねるに
つれ身体の衰える人が増えてきますがその最期を高齢者だけで看取るの
は困難です。

COCO湘南台は神奈川県藤沢市にある高齢者の共同住宅です。8人で暮ら
すこの住宅では5年前看取りの問題に直面しました。当時83歳の小池
八重さん。永らく胃がんを患い余命わずかと宣告されました。八重さん
は最期の時間を病院ではなく、ここで仲間と過ごしたいと願ったといい
ます。然し、若い人でさえ苦労する在宅での看取り、高齢者の自分たち
ができるのか、心配する声が上がりました。それに対して入居者の一人、
西條節子さんが全員に手紙を書きます。

『八重ちゃんはこの家が好きで、空や庭も眺められるし人の声も聞こえ
みんなと会うことも出来るしそのことを本当に喜んで下さっています。
これを大事なこととしたいのです。・・・・皆様、よろしく』
西條さんの訴えに入居者たちは八重さんを最期まで看取ることを決意し
ました。

(西條さん)「大変皆さんも気持ち良く本当に八重さんの希望を叶えて下
さってよかったなぁと思っています。安心しました。本当にあのときは
なんか救われた感じでしたねぇ。」

八重さんの世話をするお年寄りたちを大勢の人々が支えます。地元の診療
所は特別な訪問看護体制を敷き近所の主婦たちは流動食などを作ってくれ
ました。お年寄りたちは八重さんが穏やかな時が送れるように努めました。
お風呂では仲間が二人で介助しておしゃべりをしながら一緒にゆったり湯
船に漬かりました。

(入居者)「背中流してあげたりね、そうやって・・・お風呂は本当にもう
立てなくなるまでねぇ、一緒に入ったわね。みんな他人なんだけど家族以
上に家族だっていうのかね・・・」

入居者全員で八重さんの世話を始めて二カ月、血圧が下がり弱ってきた八
重さんはビールが飲みたいと頼みました。元気な時のようにしてあげたいと、
お年寄りたちがビールを持ってくると八重さんは笑顔を見せたといいます。
翌日、八重さんは仲間たちが見守る中息を引き取りました。

八重さんが亡くなって以来入居者は最期をどのように看取ってほしいか率直
に話し合うようになっています。お年寄りたちは今、本人の願いを出来るだ
け叶えることをお互い約束しているといいます。

(入居者)「八重さんがこうやっていったから自分たちもそうやっていけるん
だっていうね、そういう気持ちというのかしら、八重さんのようにここで死
ねるんだという気持ちで、すっごいみんな安心したんですよ。あたしたちも
こうやって死ねるだろうなっていうようなね・・・」

(キャスター)
入居者で世話をしながらそして八重さんを看取ったことで安心した、自分も
こうやって死ねるんだという気持ちになれたというのをどういうふうにお聞
きになりました?

(加藤仁・作家)
これ、エンディングイメージというのか、自分がこうやって最期みんなに見
送ってもらえるんだというイメージをそこにいる人たちが全員で共有できる
というのはものすごく大事なことではないかなと思うんですね。(中略)新し
い共同住宅という文化、共同生活ということが、今、どんどん日進月歩で行
われてきているなというのは、私自身実感していますけれども・・・

(キャスター)
共同住宅のいわばひとつの文化というものを当たり前にしていきたいと・・・

(加藤仁・作家)
そう思いますね、そうでなければ団塊の世代、ちょっとやりきれないですね。
                  
      (終わり・文責:チャーリィ)

1 件のコメント:

  1. チャーリィさん

    こんにちは。早速の初投稿ありがとうございます。
    私も、こちらの番組、見てました。
    いろいろな共同住宅の暮らしがでていて、丁寧に取材されている
    と思いました。

    一番印象深かったのは、渡辺さんと同じく、下記のシーンです。
    共同住宅でのみとりという問題を共同体で共有し、下記の心情に
    いたっていく。
    > 八重さんが亡くなって以来入居者は最期をどのように看取ってほしいか
    >率直 に話し合うようになっています。お年寄りたちは今、本人の願いを
    >出来るだ け叶えることをお互い約束しているといいます。

    そこあるのは、特別なことではなく、お互いつながりあって生きる
    人間の人間らしい成長と愛の物語でした。

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